事故物件と聞くと、死、自殺、反社会的勢力といった後ろ向きのキーワードが浮かびます。
ただ、そうした物件も存在し、市場に流通しているのです。
事故物件は正しい知識をもって対処すれば、必要以上に敬遠する物件ではありません。
ここでは事故物件を理解するのに必要な知識を紹介します。
売主の責任や相場、売却方法などを正しく理解し、事故物件に適切に対応できるようにしましょう。
また、今から不動産の売却を考えている人に、一つ忠告しておきたいことがあります。
それは、「絶対に1社の不動産会社が提示した査定額を鵜呑みにして売却活動をスタートしてはいけない」ということです。
不動産の査定額は不動産会社によって算出方法が異なり、100~500万円程度金額に開きがあることが珍しくありません。
本来であれば5,000万円が適正価格の不動産であっても、「査定額は4,500万円です」といわれることはざらにあります。
4500万円の金額を鵜呑みに売却活動をすれば、本来売れるはずだった金額から大きく値を下げて売却することになり、数百万円の損を被ってしまいますよね。
そういった事態を避けるためにも、大切なことは「複数の不動産会社から相見積もりを取ること」。
1社だけでなく複数社の査定額を比較することで、
- 「4500万円」
- 「4700万円」
- 「5200万円」
- 「5400万円」
- 「5050万円」
といった形で、適正な売却価格を客観的に把握することができます。
ただ、複数の不動産会社を1社ずつ回ったり、会社のHPから何度も査定フォームに入力するのは面倒なもの。
しかし、最近では「不動産一括査定サイト」と呼ばれるサービスが登場し、一度に複数の不動産会社にまとめて査定の依頼ができるようになりました。
不動産一括査定サイトは日本で50ほどの種類があるのですが、中でも信頼性が高いのが「HOME4U」です。
国や金融機関レベルの情報を扱う「NTTデータ」グループが運営しており、日本で初めての不動産一括査定サイトです。(運営歴18年)
事前の審査に通過した厳選された1,300社の中から、最大6社にまとめて査定の依頼ができるので、無理な営業電話を受ける心配もありません。
数百万円単位の損をしないためにも、これから不動産を売却する人は必ず利用することをおすすめします。
それではここから、事故物件の売却について詳しく解説をしていきましょう。
そもそも事故物件とはどのような物件のことか?定義を紹介
難しい法律用語ですが、瑕疵(かし)という言葉があります。
これは欠陥、キズといった意味です。
不動産用語では「隠れた瑕疵」ともいい、容易に見つけられない建物の欠陥をいいます。
事故物件もこの瑕疵の一類型なのです。
ここでは瑕疵の種類ごとに解説し、事故物件の他の瑕疵についてもお話しします。
火災や自殺など・・心理的に嫌煙される事故物件(心理的瑕疵)
火災があったり、自殺があったりと心理的な抵抗のある物件を事故物件と呼びます。
こうした事故物件には難しい言葉でいうと「心理的瑕疵のある物件」です。
人がその建物や部屋でなくなっている場合、たとえ遺体が片付けられ、部屋も徹底的に清掃されていてもやはり心理的に抵抗がある場合があります。
心理的瑕疵には事故物件のほかにも反社会勢力の事務所が近くにあることなどを含める場合もあるので注意が必要です。
シロアリや雨漏りなど・・住宅の欠陥による事故物件(物理的瑕疵)
シロアリの被害や雨漏りがあると相応の修繕が必要になります。
最悪の場合、こうした被害があることで購入候補から漏れてしまうこともあるくらいです。
この他にも柱や梁が朽ちていたり、床や天井が抜けていたりと多くのことが当てはまります。
中古住宅の場合、築年数が経つほどどこかに不具合を抱えているもの。
少々の不具合ではなく、居住という目的が十分に達せられないほどの欠陥を物理的瑕疵というのです。
都市計画予定地など・・法律の制約による事故物件(法律的瑕疵)
日本では法律によってその土地に建てられる建物の規模や用途がある程度決まっています。
これを無視して建築することはできません。
ただ、建物完成後に増改築をしたり、リフォームをしたりと適法な状態でなくなってしまう場合もあるのです。
こうした法律に違反している場合、その建物には法律的瑕疵があることになります。
一見しただけでは法律に違反しているのかはわからないものです。
事故物件の売却相場はどれくらい?
事故物件となってしまうと、なかなか相場価格では売れなくなってしまいます。
同じ価格だと事故物件ではない物件に顧客が流れてしまうからです。
現状では一律で何割引といった明確な基準はありません。
ここでは事故物件のおよその相場と特に心理的な負荷の高い事故物件について解説します。
事故物件は通常物件より2割~5割程度資産価格が下がる可能性がある
事故物件の相場といってもそれは一様ではありません。
一律2割引といったものではないのです。
その心理的瑕疵の内容にもよりますが、売却物件の場合は2割から5割ほどの割引率になります。
物件に物理的瑕疵はないので通常通り使用できますが、これくらい値引きをしないと買い手はなかなか現れません。
心理的要素の強い事故物件は買主次第
自殺、殺人事件といったセンセーショナルな事件があった事故物件は特に安く売却されます。
新聞やテレビで大々的に報道されると人々の記憶から消えにくいものです。
事件や事故が起きてから何年も経過しているのに価格が戻らない場合もあります。
ただ、中には事故物件であることを気にしない人もいるものです。
こうした人はある程度安ければお得な物件として購入します。
事故物件は買主の心持ち次第な部分もあるのです。
売主が事故物件売却の際に負う義務
事故物件を売却する際に売主が負うべき義務として瑕疵担保責任があります。
これは雨漏りやシロアリ被害などが対象ですが、心理的瑕疵に事故物件も該当するのです。
事故物件という事実を隠して売却すると大きな代償を支払う場合もあります。
一方で告知すべき期間が事故後何年か定められていないことも問題です。
売主が負う瑕疵担保責任について見ていきましょう。
売主が負う瑕疵担保責任とは何か?
物件の欠陥を瑕疵といいます。
瑕疵担保責任とは、物件に瑕疵があった場合に売主が負うべき責任のことです。
住宅として購入したのに天井から雨漏りがしたり、床下にシロアリ被害があったりすると、住宅として使えません。
こうした瑕疵に対して売主が果たす責任が瑕疵担保責任なのです。
売主は事故物件である事を買主に告知する義務がある
事故物件の場合、売主にはその事実を買主に知らせる義務があります。
これは心理的瑕疵に事故物件が含まれるからです。
物件の購入検討の段階で告知することはもちろん、重要事項説明書等でも繰り返し説明します。
これだけ執拗に告知するのは、知らなかった場合に大きな問題となるからなのです。
事故物件であることを隠して売却したらどうなる?
物件に瑕疵があり、当初の目的を達成できない場合、買主は契約解除や修補請求ができます。
瑕疵担保責任の期間は、民法上はその欠陥を知った日から1年以内の請求が可能です。
ですが実務では引き渡しから数か月が多くなります。
事故物件の場合、修補請求はなじまないため多くが契約解除です。
値引きしたうえでの再契約、損害賠償の請求も考えられます。
事故物件であることを隠して売却することはとてもリスクの高い行為です。
売主の告知義務は事故後何年まで?
告知義務に関する明確な規定はありません。
このため理屈の上では何年前であっても告知する必要があります。
告知義務に時効はないのです。
こうなると戦争での空襲被害なども調査することになりますが、実務ではそこまで行なっていません。
10年前だから告知の必要がないとか、30年前だから告知不要ではないのです。
事故物件を少しでも高値で売却する方法8つ
不幸にして事故物件を所有する可能性もあります。
その場合、一般的に事故物件を売却することは困難です。
そのような状況でも何とか販売できそうな方法を挙げてみました。
どれも通常の物件よりも売るのが難しくなることが予想されます。
少しでも高値で売却する方法は次のとおりです。
- リフォームやクリーニングを行い売却する
- 事故物件を更地にして売却する
- 事故後しばらく経ってから売却する
- 不動産会社の「買取」で売却する
- 不動産会社の「買取保証制度」を利用して売却する
- 仲介を利用するなら専任媒介契約で売却する
- 必要以上の値引きに応じる必要はない
- 物理的瑕疵なら既存住宅売買瑕疵保険に加入するのも手
それぞれ解説します。
1.リフォームやクリーニングを行い売却する
手軽な方法としてリフォームやクリーニングをして売却する方法があります。
通常の物件でもこうして売却することもあるため、手間を少なくすることも可能です。
その一方でたとえ部屋をきれいにしても事故物件である事実を消すことはできません。
物理的にきれいでも心理的にも払しょくされたわけではないからです。
リフォームやクリーニングでは心理的瑕疵が克服できない場合があることがデメリットといえます。
2.事故物件を更地にして売却する
戸建住宅の場合、建物を取り壊して更地として売却することもあります。
この方法も建物が古い場合はよく使われる売買のテクニックです。
この方法で売却できることも確かにあります。
確かに事件や事故のあった建物はなくなりました。
ですが、心理的な抵抗は薄まるとは限りません。
心理的瑕疵の場合、建物がなくなってもその場所自体に心理的瑕疵があると判断される場合があります。
更地にしたとしても心理的瑕疵が問われる可能性もあるのです。
3.事故後しばらく経ってから売却する
人のうわさも75日とかつては言われていました。
ですが、毎日のように事件や事故の報道がある現代ではその期間はもっと短くなります。
事件や事故が起こってからしばらくして、忘れられたころに売却するもの一つの手段です。
とはいうものの、その「しばらく」がどのくらいの期間かかるかはわかりません。
法律によって何年間で事故物件でなくなる、とは規定されていないのです。
事故物件に時効はないとも言えます。
4.不動産会社の「買取」で売却する
不動産会社の買取制度を利用すればその後のクレームや責任の追及の可能性が少なくなります。
事故物件であることを相手が知っていれば、不動産会社は売主に責任を追及することはしません。
買取制度を利用できれば売主としては万々歳ですが、問題もあります。
通常の物件でも買取は買取価格が安くなるものです。
まして事故物件ならば相当な値引きがされることが予想されます。
もうひとつはそもそも事故物件を買い取ってくれる不動産業者が少ないのです。
事故物件と知った時点で買取をしないという不動産業者もいます。
買取制度を利用できれば売却することは可能なものの、売主が満足するような取引になるかはわからないのです。
5.不動産会社の「買取保証制度」を利用して売却する
不動産会社の中には買取保証制度を持っている会社もあります。
買取制度と異なる点は、一度は広く販売活動を行うことです。
一定期間販売活動を行なってそれでも売れない場合はその物件を買い取る制度が買取保証制度になります。
たとえ売れなくても不動産業者がひきとってくれるので売主には安心の制度です。
ただし、買取保証制度も万全の制度とはいえません。
まずは買取制度と同じように買取保証額は安めになります。
そして事故物件は対象外としている不動産業者も多いのです。
それに加えて買取保証制度を持つ不動産会社は買取制度を持つ会社よりもずっと少なくなります。
利用できれば安心だけれど、そのサービスをしている業者を探すのが大変。
それが買取保証なのです。
6.仲介を利用するなら専任媒介契約で売却する
事故物件を仲介を利用して売却するなら専任媒介契約にしましょう。
専任媒介契約は、2週間以内の販売報告が義務付けられ、仲介業者の責任とプレッシャーが重い契約です。
担当者や仲介業者も相応の責任が生じます。
一方で専任媒介契約を締結すると、売主も他の仲介業者に仲介を依頼することができないのです。
こうした制約はあるものの、責任をもって仲介してもらうために専任媒介契約をおすすめします。
7.必要以上の値引きに応じる必要はない
繰り返しになりますが、事故物件は通常の物件よりは価格が安くなってしまいます。
ですが、事故物件である事を理由に安易な値引きに応じる必要はありません。
不動産会社の中には相場の10%などの法外な価格での売却を提示する場合もあります。
売主も早く売りたいがために不利な条件を受け入れてしまう場合もあるものです。
ですが、ここで少し立ち止まって考えてみてください。
売却価格はどうしても安くなってしまうものの、事故物件にも相応の価値があるのです。
一定の値引きがやむを得ないですが、極端な値引きには応じる必要はありません。
8.物理的瑕疵なら既存住宅売買瑕疵保険に加入するのも手
物理的瑕疵であれば既存住宅売買瑕疵保険に加入するのもひとつの手段です。
これは調査機関が調査を行い、問題がないと判断されれば加入できます。
その後何らかの瑕疵が発生すれば保険会社から保険金が支払われるのです。
心理的瑕疵は対象外ですが、物理的瑕疵ならばカバーができます。
事故物件を売却する際の不動産会社の選び方
これまで事故物件を売却することの難しさを繰り返し説明してきました。
日本の場合は仲介を依頼する不動産会社によっても売却が左右されます。
特に事故物件は訳あり物件に強い会社のほうが早期売却も可能です。
事故物件に強い不動産業者の探し方についてまとめます。
不動産一括査定を利用する
不動産一括査定サイトは、ここ最近急速に拡大を続けているサイトのひとつです。
同時に複数の不動産会社に査定を依頼できるため、依頼者には便利になります。
競争原理が働くため、物件によっては高めの査定額が出ることもあるのです。
事故物件の売却にあたってもこうした不動産一括査定サイトを活用してみましょう。
事故物件の販売実績が豊富な不動産会社を選ぶ
今やネットでの検索が全盛の時代です。
「事故物件 買取」、「事故物件 仲介」といったキーワードでいくつもの不動産業者がヒットします。
また、これらの不動産業者をまとめて紹介するサイトも存在するくらいです。
手軽に探すならネットに勝るものはありません。
この他には不動産業者に紹介してもらう方法もあります。
同業者同士こうした情報には詳しくなるものです。
ネットと業者からの紹介が事故物件を得意とする不動産業者を探す近道になります。
【Q&A】事故物件にまつわる疑問
事故物件については詳細なルールや取り決めがないものもあります。
このため、主観的で自分勝手な解釈もまかり通っているのも事実です。
ここでは事故物件にまつわる疑問をQ&A方式でまとめました。
事故物件でも任意売却することはできるのか
事故物件を取り扱うことは任意売却の場合でも可能です。
もちろん、事故物件であることを告知するのは必須となります。
また、値引きも事故物件であるため通常の取引と同じく必要です。
ただ、事故物件のため売却しても融資額が回収できない可能性もあります。
このため金融機関が難色を示す場合も考えられ、この場合は注意が必要です。
倉庫や駐車場でも事故物件扱いになるの?告知義務はある?
事故物件で問題になるものの多くは住宅です。
ただ、住宅以外でも事件や事故が起こる可能性はあります。
何らかの事故があった場合、倉庫や駐車場でも告知義務は発生するのです。
住宅ほどの影響はない場合もありますが、住宅以外の用途だからといって告知義務が免除されるものではありません。
賃貸の場合、告知義務2年~5年は本当?
「事故発生から5年も経てば告知しなくてよい」という不動産業者も確かに存在します。
実は告知義務に期間や時効に関する定めはありません。
したがって冒頭の「5年で告知なし」は間違いです。
賃貸の場合、一定期間誰かに貸せば、次の借主には告知しなくてもよいという不動産業者もいます。
これもこうした取り決め、ルールはありません。
現在のところではその事件や事故などの事実が存在するならば、時期にかかわらず告知する義務があります。
事故物件を売却する際におすすめの買取一括査定サイト
一括査定サイトといっても全国区で多くの不動産業者が参加するものもあります。
また、地域限定で厳選された不動産業者のみが参加するサイトも。
その特色は様々です。
ここでは全国区で展開している一括査定サイトを中心にご紹介します。
事故物件を売却する際におすすめのサイトです。
HOME4U
NTTデータが主催する一括査定サイトです。
2001年スタートで18年以上の実績があります。
物件数も35万件以上と豊富です。
これだけ長く運営し、多数の物件を取り扱うことができるのはやはり安心感があるからといえます。
訳あり物件、告知事項のある物件も扱っており、事故物件売却の第一歩としては最適です。
LIFULL HOME’S
ホームズ君のコマーシャルで有名なサイトです。
20年以上の実績があり、不動産ポータルサイトの掲載件数は1,000万件以上になります。
頻繁にコマーシャルをしており、不動産に詳しくない人でも知っているサービスです。
この名前が浸透していることは売却にあたっても有利に働きます。
イエウール
イエウールの特徴は参加業者が多いこと。
なんと1,600社以上が登録されているのです。
これだけの多くの不動産業者が参加していれば、その分、自分の物件が不動産業者の目に止まる機会が多いということ。
事故物件というデメリットはあるものの、多くの業者に知られたほうが売却の可能性は高まります。
事故物件に関するお役立ちサイト
事故物件に関わる情報はネットにも多くあります。
そもそもどこに事故物件があるのか、購入を検討している物件が事故物件かどうか等の情報も必須です。
また、事故物件を売却するにはどうしたらよかの情報を探している人もいます。
こうした事故物件に関する情報が詰まっているお役立ちサイトを3つ取り上げました。
大島てる https://www.oshimaland.co.jp/
事故物件サイトの代表格です。
事故物件を掲載するサイトの草分け的な存在になります。
サイトには地図上に事故物件の位置や事故の概要等が掲載中です。
地方によって情報が多いところと少ないところがあるものの、事故物件の情報を得るには最適なサイトのひとつになります。
事故物件・訳あり物件情報センター http://www.outletfudousan.com/
関東地方一都三県を中心に展開する事故物件サイトです。
新聞や雑誌などさまざまなメディアにも取り上げられています。
サイトには事故物件の情報だけでなく、事故物件の解説、売却方法、口コミなども掲載されているのです。
このため、事故物件について知りたい人は一度検索して閲覧することをおすすめします。
お困り不動産解決本舗 https://www.happyplanning.jp/
お困り不動産解決本舗のサイトの特徴は何といっても読みやすさです。
冒頭に漫画で事故物件の紹介があり、きちんとまとまった内容になっています。
もちろん、後半には専門的な説明もあるため事故物件の詳しい内容を知ることも可能です。
東京に物件がある場合には一度相談してみましょう。
まとめ
かつては自宅で最期を迎える人が多くいました。
現在では多くが病院で亡くなり、死が身近でなくなっています。
死について心理的なハードルが高くなったことが事故物件についての関心の高さになっているのです。
事故物件となってしまった以上、一定の値引きは免れません。
一方でこうした物件を気にせずに購入する人も一定数いるので売却の可能性はあります。
事故物件に対する正しい知識をもって適正に対処すれば、事故物件もきちんと処分することが可能なのです。
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